宗教・衛生面・習慣etc|
包茎手術の歴史と治療の理由に迫る

衛生管理・割礼・習慣・通過儀礼など、包皮切除が行われる理由は様々です。また、成人男性のほとんどが包茎手術をしている国もあれば、全く習慣が無い国もあります。治療の歴史についてまとめましたので、是非ご参考ください。

ミイラが手がかり?包茎手術の歴史

日本では近代になってから普及した「包茎手術」ですが、世界的に見ると歴史の深い手術です。

包茎手術の歴史、いつ頃日本に普及したのか等についてまとめてみたので、是非参考にしてみてください。

古くは紀元前に遡る

包皮切除の様子を描いた絵画と壁画

元々は、水源を節約するために始まったと言われる包茎手術(包皮の切除)。

その歴史は古くは紀元前2300年に遡ると言われており、包皮切除の様子が描かれている壁画も残っています。

また、臨床解剖学者・森本岩太郎氏が「人類学雑誌」に掲載した記事“エジプト・クルナ村出土男性ミイラの外陰部について”によると、1983年から1986年に見つかったクルナ村(エジプト・ルクソール市)の18体のミイラの内、成人3人の包皮が存在しなかったようです。

水の無い地域で盛んに行われた

エジプトは国土の90%が砂漠(乾燥地域)であり、紀元前5000年ころには既に砂漠化が進行していたと考えられています。

乾燥地域に住む生き物にとって水は大変貴重なものですので、日本のように毎日お風呂に入ることはできません。

そこで当時の人々は、恥垢の原因となる「包皮」を生まれてすぐに切除することで陰部の清潔を保つようになります。

つまり、元々包茎手術は水の少ない地域に住む人々が清潔を保つための苦肉の策であり、時が経つにつれて「習慣」となり、宗教上の「儀式」となっていったのです。

現在においても、一部の民族では衛生を理由に包茎手術がなされていることが確認されています。

清潔を保てれば手術は不要

何故日本には包茎手術(割礼)という習慣が無かったのか。

それは、日本には水が豊富に存在していたからに他なりません。

もちろん局地的に見れば水不足は起こり得ますが、日本は海に囲まれた島国である上、雨が多く降る時期も存在します。

水が貴重なものであることには変わりはありませんが、エジプトをはじめとした乾燥地域に比べて「水が身近にあること」は紛れもない事実です。

日本では切迫した状況では無かったため包茎手術が普及しなかったと考えられます。

また、日本は他国と接していないため、外科治療の発展は海外諸国と比べてもかなり遅い方(明治以降に西洋医学が普及したことで外科治療が大きく)でした。

「包皮を切除する」という発想が、そもそも昔の日本人には無かったのかもしれません。

日本における包茎手術

昭和時代の包茎手術広告

昭和に入り、日本では多くの海外文化が取り入れられるようになりました。

その一つが既にアメリカや韓国で広まっていた「包茎手術」です。

日本では昭和40年ごろから美容目的で行われるようになり、雑誌や新聞等の広告を目にしたことがある方も多いかと思います。

中には「包茎は恥ずかしい」「短小・早漏に繋がる」といったコンプレックスを煽るものもあり、問題視する声は当時から多く聞かれました。

これらは前述したような衛生面を考慮したもの又は宗教的理由から行われるものではなく、あくまでも美容を目的とした手術です。

“センシティブな悩みにつけこんで不要な手術を行い、不当な利益を得る”

そんな美容クリニックが後を絶たず、現在においてもそのような運営を続けるクリニックが一部存在しています。

包茎をからかう風習も

一方で、包茎男性をバカにする・からかう風習もあったことも判明しています。

江戸時代にはすでに「すぼのむきいれ(仮性包茎の人が包皮を手でむいている状態)」という言葉があり、さらには包茎のことを「皮かぶり」「越前」と呼ぶ風習もあったそうです。

また、男性器を模した彫刻を祀る「大鷲神社」、男性器に見立てた神輿など掲げて練り歩く「かまなら祭」などを見ますと、やはりズルムケ状態がモチーフにされています。

大鷲神社とかまなら祭の様子

かまなら祭を主催する金山神社は江戸時代より存在していると言われているため、当時からすでに包茎よりもズルムケ状態の方が男らしいという考え方が多少なりともあったのではないでしょうか(現在の御神体がいつから存在するのかは不明です)。

インターネットの普及で真実が明らかに

インターネットで情報収集する男性

もちろん、包茎手術そのものが悪いという訳ではありません。

しかし、仕上がりが思ったもの異なる・高額な治療費を請求されてしまった等の数多くのトラブルを引き起こしてしまったというのも一つの事実です。

このようなトラブルが起きてしまった要因として、情報が不足していたという時代背景があります。

当時は当然インターネットなど存在しませんので、何が良くて何が悪いのか・何が本当で何が嘘なのか、という判断材料がほとんどありません。

また、行政の相談窓口の整備が行き届いてなかったため、表に出なかったトラブルも多かったことでしょう。

つまり、広告に記載されたキャッチコピーやカウンセリング時の医師の言葉を信用するしかなく、多くの男性は正常な判断が下せない状態にあったと言えます。

現在ではインターネット上で包茎に関する学術資料、実際に包茎手術を受けた人の声、クリニックとのトラブル事例を確認することが出来ますので、正常な判断を下すことが可能です。

上手に情報を収集して、ご自身にあった優良な包茎クリニックを是非探してみてください。